This is us



駅を出ると、やけに耳に響く蝉の鳴き声が更に不安を掻き立てた。


冷房が効き過ぎていた電車に乗っていたせいか、ずしりと重い暑さに溜息が零れる。


「歩く度に溶けていってる気がする…」


「さとり、しっかり」


優花に背中を押されて、猫背が一気にぴんっと伸ばされた。


会場に着くと、色々な高校のジャージ姿が溢れていて。


私達はまだライトのついていない薄暗い体育館に、足を踏み入れた。


柔軟、簡単なアップをして個々の練習が始まる。

私の付き人は優花が担ってくれていて、私の練習風景を少し離れた場所から見守っていた。


昨夜アイロンをかけておいたリボンを取り出して、ブーメランの練習をしたり、エシャッペの練習をする。


不器用な私は手具操作が弱点だ。優花の話では、一つ一つの動作も、つい雑になってしまうらしい。



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