This is us
「さとり、頑張ってね」
「うん!ありがとう」
セッティングや開会式やらが終わり、順番はあっという間にやってきた。
レオタードに着替え、前髪も完全にピンで固定した私の顔は、きっとかちかちになっていると思う。
次だ。
スティックを握る手には、汗が滲んで何度もハンドタオルで拭った。
今まで頑張って来たんだ。
胸を張って、堂々と踊ればいい。
「がんばーっ」
淡く優しい、ベージュ色のマット。
その上をハーフシューズで一歩踏み出す。
思っていたよりも温かい感触が、足の裏から伝わってきて。
胸のドキドキが最高潮に高鳴った。
そして、曲が始まり私達の演技が幕を開ける。
演技中、頭の中にはリズムとカウントしかなかった。
思考がぷつんと途切れて、ただただ最高の演技をと。
それ以外何も考えられなかった。
全てが、全力だったんだ。
リボンの交換で一回失敗したものの、まとまった演技だったと思う。
先輩達は悔しいと言っていたけれど、達成感に満ちた顔はとても明るかった。
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