This is us


「さとり、頑張ってね」


「うん!ありがとう」


セッティングや開会式やらが終わり、順番はあっという間にやってきた。


レオタードに着替え、前髪も完全にピンで固定した私の顔は、きっとかちかちになっていると思う。


次だ。


スティックを握る手には、汗が滲んで何度もハンドタオルで拭った。



今まで頑張って来たんだ。

胸を張って、堂々と踊ればいい。



「がんばーっ」


淡く優しい、ベージュ色のマット。

その上をハーフシューズで一歩踏み出す。

思っていたよりも温かい感触が、足の裏から伝わってきて。

胸のドキドキが最高潮に高鳴った。


そして、曲が始まり私達の演技が幕を開ける。



演技中、頭の中にはリズムとカウントしかなかった。

思考がぷつんと途切れて、ただただ最高の演技をと。


それ以外何も考えられなかった。


全てが、全力だったんだ。

リボンの交換で一回失敗したものの、まとまった演技だったと思う。


先輩達は悔しいと言っていたけれど、達成感に満ちた顔はとても明るかった。


.
< 40 / 388 >

この作品をシェア

pagetop