This is us
「…エリカ」
「エリカって、香川恵梨香?」
「そうだよ、何か文句でもあるわけ?」
エリカの名前に目を見開いて驚くなつめ。
「あつ…あるある!大有りよ!」
「なんで?」
いい加減寝たいんだけど。
そんな意を込めて、小さななつめを見下ろした。
「…お祭り一緒に行けないじゃん」
「悪いけど、祭りはエリカともお前とも…誰とも行く気はない」
「エリカと行かないならあたしと行こうよ!昔は毎年いつも一緒に行ってたのに!」
俺は呆れて言葉も出てこない。
睨み合うように暫く視線を重ねていたけれど、先に逸らしたのはなつめだった。
「…あたしってもう、幼なじみ以下になっちゃったのかな」
「は?」
「なんか…寂しいな」
ははっと悲しく笑うと、そのまま背を向けて歩き出した。
「バイバイ、蓮」
階段を下りる時、一度振り返って俺を見るなつめの頬に。
一筋の涙が見えた。
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