This is us
Side Satori
あの時は何が起こったのか、分からなかった。
突然降り出した雨。
押し寄せる人の波。
あっという間に、知らない人に囲まれていて。
隣にいたはずの相原くんも、いなくなっていた。
あぁ、逸れちゃったんだ…
あちらこちらの建物に入っていく人達を見つめながら、ぼんやりと思う。
そして彼は人の波を掻き分けて、突然目の前に姿を現したんだ。
「行くぞ」
「えっ?!」
手を引かれて走り出す。
なんで?どうして?
頭の中には疑問詞ばかりが浮かんで。
叩きつける雨に打たれながら、何も考えることなんて出来なかった。
ふわふわとした、くすぐったい何かに胸を撫でられたかのような。
そんな、不思議な感情が込み上げる。
私は、彼を噂で決め付けていたけれど。
本当は、優しい人なのかもしれない…。
だとしたら、私が彼にとっていた態度は、なんて浅はかで、なんて幼稚だっただろう。
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