This is us


「クールな顔して意外とロマンチックなんだね」


そう言って、初めて俺に向けてにぃっと笑顔を見せる。


「…別に、そんなんじゃねぇよ」


あぁ、やっぱり変だ。


言葉に出来ないもどかしさに、頭がくらくらする。


彼女は、真っ直ぐだと思う。


俺の容姿や名前に媚びたりしない。

確かなものはないけれど、そう思った。



そんな俺達の目の前に、大きな一つの花火が打ち上がる。


空高く上がり、ぱっと咲いた花火は、赤い光を放ってきらきらと消えていく。


今年、初めて見る花火に暫く時間を忘れて見入っていた。


こんなに、幻想的で綺麗だっただろうか…。


次々と打ち上がっては、パチパチと破裂音を響かせて。


その一つ一つが、見事だった。


「綺麗…」


彼女の瞳が、花火の光を受けてキラキラと輝いている。


その姿はまるで小さな子供みたいで、俺の頬がふっと緩んだ。



時間も忘れて。


打ち上がる花火を見つめながら、心が満たされていくのを感じた。


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