最強不良姫 ―黒蝶―
美瑠紅と亜由美の雑談が盛り上がっている時に、
愛華は真剣な表情をして俯き、考え込んでいた。
いつもの愛華なら聞こえてくるであろう
美瑠紅と亜由美の(小声の)雑談ですら
今の愛華の耳には入ってこなかった。
(…信哉は水龍に…一之瀬に、撃たれた。
信哉は、目を閉じて回想している私に
攻撃しようとしていないかだけを気に配りすぎて…
自分を、狙っている一之瀬に気付かなかった。
全部…私の所為だ。
全て……。私が、いけないんだ…。)

“愛華は、自分を責めるから――。”
それを知っている者は、多いようで少ない。
愛華の家族と親友、彼氏だけだ。
だから、それを知っている者達は
愛華が傷付かないよう、努力していた。
だから、これまでそんな事は殆どなかったのだ。

だから――。
今回の事は、余計に愛華を
苦しめ、痛めつけ、もがくと余計に絞まる…。
そんな鎖を、愛華の全身に巻きつけたように
愛華を苦しみのどん底に落としたのだ。
――その苦しみのどん底は、底なんてものは無く
ただ、只管に暗闇へ落ちていくだけ。
< 86 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop