最強不良姫 ―黒蝶―
「…あのっ…」
愛華が、出て行く前に
控え気味に医師に聞く。
「何ですか?」
そんな小さな声も拾い、
医師は笑顔を向けた。
「し…ゃ……信哉は、どうだったのですか?」
初めは聞き取れない程小さな声だったが、
やがて思い切って普通の声で聞いた。
「…大丈夫ですよ。」
そう言って優しく微笑む先生に、
愛華は困惑した。
「え…だって……さっき、信哉が病室を
案内されてるみたいでした…けど。」
段々口篭ってくる愛華に、
医師は「ああ、」と微笑んだ。
「あれは、誰かの見舞いに行くから…
と言っていましたから、案内したんですよ。」
その言葉に引っ掛かりを覚えた愛華は、
眉を顰めた。
「…誰か……?」
思わず呟いた声に、医師は反応した。
「ええ。…確か、ご家族の誰かでしたが…。」
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