最強不良姫 ―黒蝶―
「じゃあな。」
日が暮れた頃。
「ん、ばいばい。
…気を付けてね。」
私は信哉に送ってもらっていた。
…信哉は怪我人だから
今日は良いよ、って言ったんだけどね。
(…やっぱり、いつもの信哉とは違う。)
私の言葉にも、背を向けたまま
片手を挙げただけだった。
…それとも。
(…自惚れ過ぎ、かしら……。)
そんな事を思って暗い顔をしていると、
先に帰って来ていた旬達が心配そうに
こちらの方を見ていた。
…勿論、気付いていない訳ではなかったが…
愛華は、気付いていないフリをしていた。
それが、どんなにしてはいけない事だったか。
…どうして、私はこの時――。
何も、考えていなかったんだろう。