天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
中から教材を取り出した。

「ははは!もう小学生のドリルはない!くらえ!大学入試アタック!」

怪人セールスマンの能力は、目から脳に訴えかけて、相手の動きを奪う。自由になる為には、問題を解くしかないのだ。

「いやあ!」

悲鳴を上げ、顔を背ける里奈。

「無駄だ!受験や試験は必ず、やってくる!我等が支配した世界でも、試験は残してやるわ!ははは!」

高笑いをする怪人セールスマン。

「あ、あたし就職する!でも〜大学で遊びたい!」

「おのれ!学業を何だと思ってるんだ!」

セールスマンは、英語の教材を取り出し、

「これもくらえ!」

さらに攻撃力を増した。

「ぎゃああ!ここは日本よ!ジャパンなんて国はないわ!」

さらに苦しみだすが、何とか堪えている里奈を見て、セールスマンは焦り出した。

「何故だ!?何故堪えれる!」

「もうすぐ〜し、少子化で…よ、選り好みをしなければ…だ、誰でも大学に入れるもん!」

「な!」

里奈の言葉に、セールスマンははっとした。

「つ、つまり…勉強しなくても大学に入れると!お、おのれ〜え!少子化め!」

セールスマンは鞄の中から、新たなる教材を取り出した。

「世の中の厳しさを教えてやる!」

それは、高校二年の教科書だ。

「落第したら、進学はできまいて!」

「ら、落第!?」

未来の大学入試と違い、現実の壁が襲いかかる。

予想以上に怯える里奈を見て、セールスマンは勝利を確信した。

「さらばだ!乙女レッド!」

その時、セールスマンと里奈の間に、1人の女子生徒が割って入った。

「何者だ!私の邪魔をするな!」

セールスマンは、女子生徒にも教材を向けた。

しかし、すべての攻撃は効かなかった。

「な!」

唖然とするセールスマンの顔面に、すらっと細く長い足が突き刺さったからだ。

「ば、馬鹿…」

その場で崩れ落ちるセールスマン。

彼の能力の弱点は、頭が良い生徒には効かないのだ。

「理香子!」

自由になった里奈は冷や汗を拭いながら、前に立つ女子生徒の名を呼んだ。
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