天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「モード・チェンジ!」

玉座から立ち上がったアルテミアの姿が、変わった。

背中から生えた二枚の白き翼を羽ばたかせて、飛び立とうとした瞬間、アルテミアの鼻スレスレに、一筋のビームが通り過ぎた。

ビームは、玉座の間の壁を貫通すると、数キロ先の地面に着弾した。

凄まじい火柱が上がると、城中を照らした。

「どこに行かれるおつもりですか?」

アルテミアの横にいつのまにか、人差し指を突きだしたサラが立っていた。

「い、いやあ〜。べ、別に、どこにも行く気はないけど」

慌てて翼をしまうと、アルテミアは倒れるように、玉座に座った。

「あなたは、この魔界の王…即ち、神になられたのです。しかし、まだまだ学ぶことは多い。この世界の魔神達を統べ、さらに人間達にも影響を与えなければなりません」

「別に〜神になんかなりたくないし」

サラの言葉に、口を尖らせた瞬間、アルテミアに人差し指が向けられた。

「な、なんてね」

アルテミアは変身を解くと、改めて玉座に座り直した。

そんなアルテミアにため息をつくと、サラは腕を下ろし、玉座の間から見える景色に目を向けた。

「確かに…おかしなことが起こっています。この魔界にも、数百人の人間が落ちて来ました。彼らはすぐに、魔物に捕食されましたが…」

「!」

サラの言葉に、思わず腰が浮くアルテミア。

そんなアルテミアに視線を戻すと、サラは話を続けた。

「しかし、この件に関しては、我々は動くことはしません。これは、人間達の問題です」

「だが、魔物に殺されているのだろうが!」

先程とは違い、アルテミアの声に怒気があった。

「アルテミア様」

サラはアルテミアに体を向けると、跪いた。

「!?」

それを見て、アルテミアの動きが止まった。

「この世界の道理…。魔物は、人間を食らいます。あなた様の思いは、わかりますが…魔物達も生きているのです。大軍を率いて、人間達を大量に殺すことは、あなた様の代になればなくなるでしょう。しかし!魔物の捕食を禁じることはできません」
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