天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「それに驚いていますよ。この空間で、意識があるとはね」

影は拍手をした。

「流石です」

(!?)

俺の体は後方にジャンプしたまま、空中で固まっていた。

「先程…レベル1の空間では、邪魔が入りましたからね。用心の為に、レベル3まで上げましたよ」

影はにやりと笑うと、両手を広げた。

「ようこそ!時の止まった世界へ」

(時を止めただと!?)

俺の体で、思考だけが働くことができた。

目も開いているが、神経が止まっている為に、何も脳に情報が来なかった。

「世界の支柱であるあなたを、手に入れれば…この世界は一気に崩れるはず!もしくは、この体を乗っ取り、我々の神の器にするか…」

影の体に、色がついていく。

「選択肢が広がることは、いいことです」

この学園の制服姿になった男は、にやりと笑った。

「生憎」

「え!」

男は驚きの声を上げた。

「選択肢はないよ」

なぜならば、男の首筋に、俺の手が差し込まれたからだ。

「何!?」

唖然とする男をそのまま、真っ黒になった廊下の床に叩きつけた。

「あ、あり得ない!時が止まっている空間で動けるなんて!」

「自分だけが、特別だと思わないことだ」

俺の目が、赤く輝いていた。

その瞳に気付いた男は、絶句した。

「な!」

「先程言ったお前達の神とは、何者だ!」

「ま、まさか…目覚めていたとは…不覚!」

「お前に、時を止める力はない!誰だ!その神は!言え!」

俺の目がさらに赤く輝くと、強制的に吐かせようとした。

その時、周囲を包む闇が…男の両目に突き刺さった。

「何!」

俺の全身にも、闇が絡み付いていた。

「申し訳ございません。神よ!」

目を潰されながらも、男は叫んだ。

次の瞬間、男の体は闇の底に落ちていった。

「人はすべて!地獄へ!この世界を汚した人間に、生きる資格はない!」

男は落ちながらも、喜んでいた。

「そんな人である私に!罰を!」

「く、くそ!」

俺は、全身から魔力を放出した。

光が廊下を包むと、一瞬で元の景色に戻った。
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