天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
九鬼の頭があった空間に、風を切り裂く蹴りが通り過ぎた。

九鬼は床に手をつくと、そのまま転がり、距離を取って立ち上がった。

「誰だ!」

構えようとして、九鬼は目を疑った。

「七色の乙女ソルジャー」

「フン!」

蹴りがかわされると、即座に手刀に攻撃を変えた乙女レインボー。

人のスピードを超えた鋭い攻撃であるが…正確に急所を狙う為、九鬼は何とか避けることができた。

しかし、服や皮膚の表面が切り裂かれていた。

(この動き!?)

よけれた理由は、それだけではなかった。

どことなく、自分の動きに似ていたのだ。

連続攻撃をかわされた乙女レインボーは、改めて構え直した。

(来る!)

新たな攻撃に敵が入る前に、九鬼は変身しょうと、乙女ケースを突きだした。

「装ちゃ」

叫ぼうとしたが、中島の言葉が九鬼を止めた。

(変身しないで)

その一瞬の躊躇いを、見過ごす乙女レインボーではなかった。

神速の動きで、九鬼の手にある乙女ケースを蹴り上げ、さらに半転すると、九鬼の脇腹に蹴りを叩き込んだ。

「クッ」

とっさの動きで、脇腹に蹴りが当たる寸前、動きに逆らうことなく、九鬼は横に飛んだ。

廊下の窓ガラスを叩き割り、外に飛び出した九鬼。

「ウッ」

上手く飛んだが、脇腹に痛みが走った。蹴られた部分が赤く腫れ上がっていた。

思わず身を捩った九鬼の顔が、空を見上げた。

一瞬…痛みでわからなかったが、いつもと違う空に絶句した。

「な!」

それは、痛みを忘れさせる程だった。

「つ、月が!」




「フッ」

変身を解いた猫沢は、新たに手にいれたもう1つの乙女ケースを握り締めていた。

「九鬼家の悲願!フフフ…」

シルバーの乙女ケースを握り締める猫沢の腕が、震えていた。

「あのお祖父様が求めた!神殺しの力が!今、あたしの手の中に!」

猫沢は、歓喜の声を上げた。

「この力は、真弓!あなたが手に入れるものではなかった。最初は、あたしが…!そうよ。あたしこそが!」

猫沢は、シルバーの乙女ケースを突きだした。

「乙女シルバーよ!装着!」

銀色の光が、猫沢を包んだ。


< 129 / 295 >

この作品をシェア

pagetop