天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「月が!」

九鬼は空を見上げた。

「黒い!」

その時、九鬼の横の壁が、窓ガラスごと吹き飛んだ。

「!」

九鬼は横に飛ぶと、距離を取って構えた。

着地の瞬間、脇腹が痛んだが、気にしている場合ではない。

「乙女シルバー…」

廊下から飛び出してきた乙女ガーディアンを見て、九鬼は顔をしかめた。

「いや…違う!」

シルバーだったのは一瞬で、直ぐ様表面が酸化して、黒くなっていく。

「乙女…ダークか」




「うん?」

屋上で、監視の為立っていたサーシヤの前に突然、地上から金網を飛び越えて着地したのは、乙女ブラックだった。

「月の戦士か?」



そして、体育館の屋根で佇んでいたフレアの前にも、いつもよりもナイスバディな乙女レッドが立っていた。




「もう…日が暮れたか」

猫沢との通話を終えた俺は、携帯を切ると、正門に向けて歩き出した。

レダのパーティーまでに時間があった為に、校舎内を探索し、時間を潰していたのだ。

クラブ活動の時間も終わり、帰る生徒もいない。

1人歩いていると、後ろから鞄を抱えた生徒が追い抜いて来た。

補習を終えた桃子だった。

「やっと帰れます!」

嬉しそうな顔で走る桃子の動きが、正門のそばで止まった。

「え…」

少し驚くような声を上げると、桃色の光が桃子を包み…乙女ピンクへと変身させた。

「うん?」

その様子を見ていた俺も、足を止めた。

ゆっくりと振り返った乙女ピンクの手に、バズーカ砲が握られていた。

「!?」

目を見張る俺に向けて、バズーカは発射された。





「月は、反転した。人々を照らす光から、蝕む光へと」

手長男と…生徒会室に監禁されていたはずの半月ソルジャーを従えて、廊下を歩くのは…死んだはずの副会長、桂美和子だった。

そして、その前に…中島が姿を見せた。

軽く自分を睨む中島を、桂はせせら笑った。

「反抗的な目ね。いいのかしら?そんな目をして」

制服姿の桂は、瓶を中島に示した。
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