天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
刈谷はさっと跪くと、頭を下げ、

「私はただ…炎の騎士団として、やつに借りを返しただけでございます。この世界で、リンネ様にお仕えする為に…あやつの力を借りた故に」

「そう」

刈谷の言葉に、リンネはただ背を向けると歩き出した。

「リンネ様」

刈谷は動かない。

「しつこい男は嫌いだけど…忠義心は好きよ」

「リ、リンネ様…」

刈谷の背中が震えていた。

「好きにしなさい」

「は!」

刈谷はもう一度地面に額がつくほど、頭を下げると、立ち上がった。

「♪」

リンネは歩きながら、緑の乙女ケースを軽く投げて遊んでいたが、西館を曲がり、九鬼達とは反対側に回ると、開いている窓から、乙女ケースを差し入れた。

「ありがとう。でも…あなたはよかったのかしら?」

「…」

校舎内の廊下の壁にもたれ、携帯でメールを打っている花町蒔絵は、送信してから、乙女ケースを受け取った。

すると、リンネの胸元からメールの着信音が響いて来た。

リンネは谷間から携帯を取ると、メールを確認した。

「了解」

それだけ言うと、蒔絵の近くから離れた。

「クスッ」

少しの笑い声を残して、リンネは消えると、その後を追って刈谷も消えた。




「黒焦げにしてもいいけど、灰にはしないでね」

中島の怒涛の攻撃を見て、満足気に頷くと、桂はその場から歩き出した。

「あたしにもやることがあるから」

そして、九鬼と乙女ダークが戦っているはずの西館裏に向かった。

「生徒会長様は、今頃ボロボロにかしら?」

鼻歌混じりで楽しそうに、西館裏に向かった桂は…予想外の結果に一瞬、言葉を失った。

倒れているのは、九鬼ではなく…乙女ダークの方だった。

激しく肩で息をする九鬼を見て、桂の表情が変わった。

「ど、どうして!あんたが!」



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