天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「!」

桂の声に気付き、九鬼は顔を向けた。

「桂さん?まさか…あなたに会えるなんて…死んだはずのあなたに」

少し笑顔になった九鬼に、桂はキレた。

「どうして、あんたは!また生きているのよ」

桂は血走った目で、九鬼を睨み、

「あたしは、あんたが生きていることが許せない!」

プラチナの乙女ケースを突き出した。

「そ、それは、理香子の乙女ケース!」

九鬼は驚きの声を上げると、表情を強張らせた。

「これは、あたしが頂いたのよ!力だけではなく」

桂は九鬼の変化に喜ぶと、スカートのポケットから、瓶を取りだして見せた。

「女神自身もね」

「桂さん!」

九鬼は、桂に向かって走り出した。

「フン!」

桂は鼻を鳴らすと、顎を上げて見下すような格好になりながら叫んだ。

「装着!」

プラチナの光が、桂を包み…乙女プラチナへと変身させた。

「理香子を返して!」

助走をつけ、飛びかかろうとする九鬼に、乙女プラチナは瓶をつまんで見せた。

「下手な動きをすると、握り潰すわよ」

「クッ」

空中で顔をしかめると、目の前に着地した九鬼の首筋に、乙女プラチナは回し蹴りを叩き込んだ。

ふっ飛んで、地面を転がる九鬼を見て、乙女プラチナは歓喜の声を上げた。

「最高〜!無敵の生徒会長様も、こう見たら…無様ね」

「あ、あなたの目的は何?」

何とか立ち上がると、九鬼は乙女プラチナを見つめた。

「目的?目的は簡単よ」

乙女プラチナは、瓶をポケットに入れると、九鬼を指差し、

「あなたが生きているのが、許せない!いや、あたしが死んでいるのに…みんなが生きているのが、許せない。だから、みんな死んで貰うのよ!」

にやりと笑った。

「そ、そんな理由で」

九鬼は構え直した。

「それに、心配ないわ。死んでも、こうして〜あたしはいるわ。だから、大丈夫!みんな、死んでも!ねえ…だから…みんな死んでよ」

懇願するような桂の瞳の奥に、九鬼は哀しみを見た。

だからこそ、構えた。

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