天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「命を好きにさせない!」

「命なんて、奪ったもののものなのよ」

乙女プラチナの全身が、輝く。

「誰にも権利はない!」

九鬼は、拳を軽く握り、桂に向けて突き出した。

「だったら、なぜあたしは死んだの?だったら、なぜ毎日誰かが殺されるの?この世界は、こうやって動いている。弱者は採取され、殺される!だけど!」

乙女プラチナは動いた。

一瞬で間合いを詰めた。

2人の視線が、絡まる。

「だけど、死んだ今だからわかる!あたしは、死ぬことで!強者達より上に立てた!そして!」

乙女プラチナの蹴りを、九鬼は避けた。

「死んで初めて、人は平等になれる。だって、あたし達に食欲も物欲もない!あるのはただ…」

乙女プラチナの攻撃は、続く。

「生きているものを殺してあげたいという思いだけよ」

「ふざけるな!」

乙女プラチナの攻撃の隙間をついて、九鬼の蹴りが入った。

胸元にヒットしたが…乙女プラチナはびくともしない。

「無駄よ。死んだ者を殺せない」

「く」

九鬼は顔をしかめると、乙女プラチナから離れた。

「それに…」

乙女プラチナは瓶を取りだし、九鬼に見せた。

「あたしの手には、これがある」

楽しそうに笑った乙女プラチナの後ろで、雷鳴が輝いた。

「生きている人間って、ほんと…不便ね。こんな女1人の為に、苦しんでる」

「まさか!」

九鬼ははっとした。

「あの雷鳴は…中島が起こしているのか!」

「馬鹿な男よ。人間以上の力を持ちながらも、それを使うことなく過ごすのが、願いなんてね。小さい男よ」

「中島!」

九鬼の脳裏に、2人並んで恥ずかしそうに手を繋ぐ理香子と中島の姿が浮かぶ。

「そんな苦しみも死んだらなくなるわ」

乙女プラチナは、瓶を示し、

「あなたを殺した後、女神も殺して上げる。だけど…変な動きをしたら、先に殺すけどね。どうする?先がいいかしら?」

乙女プラチナは、首を傾げて見せた。
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