天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
(桂さん…)

九鬼は乙女プラチナを睨みながらも、心の中では泣いていた。

桂は、こんな人間ではなかった。

しかし、闇に堕ちて…死んだ。

(人は弱く儚い。故に、強くなりたいと心掛けないと…すぐに、弱さに負けてしまう)

桂に哀しみを感じたからと言って、同情する訳にはいかない。

(あたしも負けてはいけない!)

九鬼は覚悟を決めた。





「はっ!」

経験の差か…。次第に乙女ブラックの動きを見切ったサーシャ。

「グラビティアーム!」

血に色濃く残るエルフの魔力を発動させたサーシャの瞳が、エメラルドグリーンに輝く。

次の瞬間、乙女ブラックの動きが止まった。

数倍の重力が、乙女ブラックだけにかかり、動きを封じたのだ。

地面にめり込んだ足が、乙女ブラックの技をも奪った。

「は!」

気合いとともに、乙女ブラックの横を通り過ぎたサーシャ。

ドラゴンキラーを一振りすると、乙女ブラックに向かって言った。

「安心しろ。やっと終わりだ」

「!」

乙女ブラックの眼鏡が真っ二つになると、地面に落ちた。

すると、変身が解け、崩れ落ちるようにグラウンド上に倒れた。

「さてと…」

サーシャは深呼吸すると、自分の立ち位置を確認した。

ほぼグラウンド中央にいる自分の右側…体育館前には、フレアがいた。

校舎寄りには、太陽が…麒麟と化した中島の攻撃を受けていた。

「…」

サーシャは迷うことなく、太陽のもとに向かおうとした。

「大丈夫です!」

そのサーシャの動きを読んだ太陽が叫んだ。




「大丈夫ですよ」

数発の雷撃を受け、地面に片膝をつけてしまったが、何とか立ち上がることができた。

「電気には、慣れてしますから…。もっと凄い雷撃を喰らわされたこともしばしば…」

脳裏に浮かぶ…ブロンドの悪魔の姿。

しかし、その時と今とは、肉体が違う。

(これ以上喰らったら、アウトだ)

と思っていても、言葉に出す訳にはいかない。
< 143 / 295 >

この作品をシェア

pagetop