天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「よかった…」

何とか制御できたようであった。

ほっと胸を撫で下ろしが、まだ腕が痺れていることに気付き、俺はまじまじと手を見た。

「相原…」

気を失いながらも、中島が呟いた言葉に、俺ははっとした。

「月の女神は!?」





(空が割れた?)

乙女プラチナと戦いながら、九鬼は一瞬の変化に気付いていた。

「余所見をするな!」

乙女プラチナの回し蹴りをかわし、後方に逃げた九鬼の横に倒れている猫沢がいた。

そして、猫沢のそばには黒く変色した乙女ケースがあった。

「乙女シルバーの力を使わないのかい?もっとも、変身した瞬間、闇に堕ちるけどね」

乙女プラチナはせせら笑いながら、九鬼に近付いてきた。

(死者である彼女を倒す為には、乙女シルバーのムーンエナジーがいる!しかし!)

九鬼の頭上にある月は、変色していた。

「どうした?拾わないの?」

乙女プラチナが神速の動きに入ろうとした瞬間、回転する2つの物体が遮った。

「な、何だ!?」

突然、戦いに割って入ったものに、乙女プラチナは足を止めた。

同じく…乙女ケースに手を伸ばしかけていた九鬼も、動きを止めた。

「これは!?」

九鬼の記憶が、よみがえる。

(赤星君!)

しかし、西館裏に飛び込んで来たのは、赤星浩也ではなく、女の子だった。



「行くぞ!」

俺は走りながら、乙女プラチナの動きを止めた2つの物体が戻ってきた瞬間、掴んだ。

すぐに、胸元でクロスさせると、今度は十字架に似た剣に変わった。

「シャイニングソード!」

「小娘が邪魔をするな!」

乙女プラチナの姿が振り向き様、消えた。

「モード・チェンジ!」

俺の姿も消えた。

「!?」

その様子を見ていた九鬼は、目を見開いた。

「は、早い…」

九鬼がそう呟いた時には、戦いは終わっていた。

「な」

絶句する乙女プラチナの動きが止まると同時に、彼女の体は浄化されて…消えた。

プラチナの乙女ケースが、地面に落ちて転がった。
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