天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「くっ」

ダメージが、すぐには回復しなかった。

俺はふらつきながらも、正門を目指した。

「お嬢様」

西館から中央館、そして東館を抜けた俺の前に、小柄な男が突然姿を見せた。

深々と頭を下げた後、男は顔を上げた。

「ご予定通り、御迎えに参りました」

「?」

一瞬、首を傾げたが、すぐに思い出した。

(レダのパーティーか)

俺は歩こうとしたが、すぐにふらついてしまった。

「肩をおかししましょう?お嬢様」

どこか淡々とした物言いの男の申し出を、俺は断った。

「大丈夫です」

笑顔を男に向けた俺の腕を後ろから、掴む者がいた。

「そう言わずに、素直になりましょうよ。お嬢様」

「!」

驚いた俺の脇に、強引に肩を入れたのは、高坂だった。

「ご級友ですか?」

男の質問に、高坂は笑顔でこたえた。

「ええ。今日のパーティーには、お嬢様からお誘いを受けておりまして」

「な」

勿論、そんな約束はしていない。

「さあ〜行きましょう」

しかし、高坂は強引に、俺を連れて歩き出した。

普段なら、振り払うのだけど…今の俺に、そんな力はない。

「わかりました。それは、予定外ですが…お一人くらいは…」

「いや…もう1人追加してくれ」

反対側の脇に、サーシャが肩を入れてきた。

「サーシャさん…」

思わず目を丸くした俺に、サーシャは顔を向けずに、小声でこたえた。

「お前の正体は、後で確かめる。今は…」

そこまで言ってから、サーシャは前に立つ男を見た。

一見、小太りの普通の男に見えるが…。

(佇まいが違う!只者ではない)

サーシャは、男の立ち方一つで力量を推測していた。


「では…行きましょうか?」

男は三人に頭を下げると、前を向き、歩き出した。

「いくぞ」

サーシャの号令で、高坂が歩き出した。

俺も引きずられるように、足を進めた。

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