天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「あのお〜」

歩きながら、俺は高坂に顔を向け、

「今から向かう場所は…何があるかわかりません。サーシャさんはともかく…あなたは、危険です」

きっぱりと言い放った。

「確かにそうかもしれないが…」

高坂はフッと笑い、

「危険な場所にいかないと知ることができないなら…俺は行く。何があっても。それが、情報倶楽部部長としての生き方何でね」

肩を入れ直した。

「…」

その意志の強さを感じ、俺は諦めた。無理矢理振りほどく力もなかった。

(とにかく、今は…体力の回復に努めよう)

体力が戻れば、守ることもできるはずだった。

そう考えていた俺の耳に、昔聞き慣れた…ある音が飛び込んで来た。

「失礼」

高坂は上着のポケットから、携帯を取り出した。

しかし、鳴っているのは…携帯ではなかった。

「!?」

高坂も驚くと携帯をしまい、あるものを取り出した。

「!」

俺は目を見張った。

それは、一枚のカードだった。




「真。聞こえる?」

洗脳が解けて、意識を失った緑を、情報倶楽部の部室まで運んださやかは、カードを耳に当て、高坂に連絡していた。

「どうやら…向こうの世界と少し繋がっているようね。カードシステムが、復活しているわ」

「カードが使えるのか!」

高坂は驚きの声を上げた。

「あまり喜ばしいことではないけどね」

さやかは、部室内のベッドに横になっている緑を見つめ、

「汚れた月に操られていた他の子達は、保健室に運んで、生徒会長が見ているわ」

「そうか…。了解した」

「あんたも無茶をしないようにね」



さやかとの通信を切った高坂の手にあるカードを、俺はまじまじと見つめた。

「うん?」

あまりの視線の強さに、高坂は俺の顔を見、誤魔化すように言った。

「最近の携帯は、ついにこんなに薄く…」
「体力回復させてくれませんか?」

高坂の言葉を遮るように、俺はじっと目を見つめ、頼んだ。
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