天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「?」

高坂の動きで、場の空気が少し変わった。

俺は一度力を抜くと、深呼吸をした。

レダに攻撃をするよりも、高坂を守らなければならなくなった。

「君は…」

高坂は、真っ直ぐにレダの目を見つめた。

「奴等の味方なのか?」

高坂の言葉に、レダは首を横に振った。

「君は!」

高坂は、さらに前に出た。

「この世界の人間ではないね」

その言葉に、レダは頷いた。

「やはり」

高坂は頷いた。

「この世界の人間じゃない?」

サーシャは、右腕を押さえながら、眉を寄せた。

「あたしは!」

突然、レダの雰囲気が変わった。

左腕が、再びうねりを上げた。

「あの世界に戻りたい!」

「!?」

驚く高坂に向かって、床を蹴ると、レダは左腕を突きだした。

「モード・チェンジ!?」

俺の姿が消えた。

次の瞬間、レダの左腕が飛んだ。

「うおおっ!」

それだけではなかった。

レダの体も、中を舞っていた。

「やめろ!」

サーシャが叫んだ。

しかし、俺は止まらない。

レダは、後方に着地した。

「クッ」

しかし、腹に激痛が走った。腕を斬られただけではなく、腹を蹴られていたからだ。

「何という速さだ」

と、レダが呟いた時には喉元に、シャイニングソードの切っ先が突き刺さる寸前だった。



(お前は、人を殺してはいけない)

突然、アルテミアの声が響いた。

「間に合わないか!」

サーシャは、床を蹴った。砂になった右手が復活していた。

「!」

まったく反応ができなかったレダは、喉にシャイニングソードが突き刺さることを覚悟した。

しかし――。

「はあ、はあ、はあ」

俺は、踏み止まっていた。

シャイニングソードの切っ先は、レダの喉にほんの少しだけ触れていた。

俺のそばに来たサーシャは、奇跡的に止まった剣の先を見つめ、ほっと胸を撫で下ろした。

しかし、少しは喉に刺さっている為に、出血するはずだった。

「な」

サーシャと俺は、絶句した。

何故ならば…流れたのは、血ではなかったからだ。
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