天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
その動きを見て、俺はレダの瞳に見た悲しみの正体を知った。

「他人の体を得て、生き返っても意味がないから」

レダの体が消えていく。

「待て!奴らの目的は、この世界の人間の肉体を奪い、ブルーワールドで生き返ることなのか!」

サーシャの質問に、レダは笑った。

「それが…すべてではないわ」

微笑みながら、レダは消滅した。

いや、実際的には…彼女はレダではない。

俺が彼女の名を知るのは、大分後のことである。

「…」

俺は、オウパーツのそばに溜まった砂を見つめた。

「彼女は、レダではない!?そう言えば…ステージでの歌声と…いや、歌になると声の感じが変わる者もいる」

悩む高坂を無視して、俺はオウパーツに手を伸ばした。

「や、やめろ!」

その行動に気付き、高坂は叫んだ。

「これは、魔王の防具だ。王の資格がある者。もしくは、適合者でなければ、塵になるぞ」

しかし、高坂の忠告とは違い、俺は難なく左腕に手にした。

(王の資格があるのか?)

サーシャは、右腕を見つめる俺を見つめた。

(やはり…この女の正体は)

サーシャが確信を持とうとしている中、俺はいろいろ考えていた。

(奴等の目的は、この世界の人間をブルーワールドに落とし、砂の世界の人間達に肉体を与える)

それだけでは、どうもしっくり来なかった。

(それに、本物のレダはどこに?)

すべては、まだ謎であるが…当面の目的は、レダ探しと、ティアナに似た女の行方を突き止めることに決めた。


「お嬢様」

変な空気が流れる会場内に、小柄な男が入ってきた。

俺に頭を下げると、

「お時間です」

周りの状況を気にせずに、淡々と言った。

「え」

俺は、オウパーツを手にしながら、目を点にした。



その夜のニュースは、会場内での五十人をこえる失踪事件を伝える…ことはなかった。

ただ…ラジオの生放送から、レダの声が聞こえてきた。

「皆さん。お元気ですか?」


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