天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「は!」

気合いとともに、風を纏った足が、半月ソルジャーを狙い、落下する。

「嫌だ!」

情けなくも、絶叫する半月ソルジャーの前に、誰かが割って入った。

「何!?」

絶句する乙女ブラックの蹴りを、日本刀で受け止めるミニスカートで金髪の女。

「やはりか…」

軽く日本刀を押し出すと、乙女ブラックの蹴りを跳ね返した。

「お、お前は!」

着地と同時に、金髪の女を睨む乙女ブラック。

「フン!威勢だけはいいが、蹴りが軽い。やはり…偽者か」

刀をしまおうとする金髪の女子生徒に、守られた形になった半月ソルジャーはまだ震えながらも、強がって見せた。

「お前は、魔神イハンダー!よ、よくやったぞ!」

「フン」

イハンダーと言われた女子生徒は半月ソルジャーに見向きもしないで、ゆっくりと歩き出した。

「ど、どこに行く!」

「はあ〜?」

ここで初めて、半月ソルジャーの方を向いた。

鋭い眼光に睨まれ、半月ソルジャーの身が萎縮した。

「おれは、貴様らの仲間ではない。おれはただ…九鬼真弓の敵なだけだ。やつ以外の下らん相手をかまう暇はない」

と言い放つ金髪の女子生徒の死角に飛び込んだ乙女ブラックは、蹴りを放った。

「お、おい…」

その蹴りを刀の柄で受け止めた金髪の女子生徒は、サングラスの越しの乙女ブラックの目を睨んだ。

「無粋だな。今はただの女子高生だぜ?」

魔神イハンダーは、普段…十六夜小百合として、学生生活を送っていた。

「く!」

乙女ブラックが力を入れても、十六夜はびくともしない。

「まあ…いい。今日は特別だぞ」

フッと笑うと、一瞬で刀の力を抜き、乙女ブラックのバランスを崩させると同時に、蹴りを乙女ブラックの腹に叩き込んだ。

「う!」

離れる乙女ブラックに背を向けると、十六夜は刀を縦にして、

「イ、ハンダー!」

と叫びながら、横にした。

十六夜の姿が、女子高生から…メタリックボディのサイボーグへと変わった。

「相手をしてやる!」

「くそ!」

乙女ブラックの姿が消えた。

しかし、イハンダーの刃は消えたブラックをとらえる。
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