天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「やあ」

俺の声に、ロバートは微笑んだ。

旧防衛軍の結界士の黒装束を身に纏い、左右のバランスが均等で真っ直ぐに立つロバートは、ゆっくりと2人に近付いてきた。

「今、この世界はパニックになっているよ。世界中の人間が目眩を起こしたとね。一部電車は止まり、交通事故も多発しているようだ。たった数秒だけの魔力の発動でね」

そして、俺のそばで止まると、じっと見つめた。

「君が思うように、力を使えないのはそのせいだね」

「ロバートさん」

「しかし…知らなかったよ」

ロバートはまじまじと、俺の上から下まで確認した後、

「君にそんな趣味があるなんて!」

目を逸らした。

「違います!」

俺は顔を真っ赤にして、否定した。

「赤星?赤星浩一だと!?そ、それに、ロ、ロ、ロバート!?お前は、成仏したはずだ。砂の世界に、お前はいなかった」

驚きと困惑、さらに嬉しさが込み上げ、冷静なサーシャが混乱していた。

そんなサーシャに、優しい視線を送ると、ロバートは話しかけた。

「一つ一つ説明するよ。まず一番わかっている自分自身のことから…。俺は確かに、満足して死んだ」

ロバートは、母親の死の真相を知り…狂ったアルテミアに、人というものを教える為に、その命を投げうった。

「しかし、一つ心配事が残っていた。天国にいっても、愛する女がいない。だから、転生を拒否し待っていたら…俺は砂の世界に来てしまった。待つということは、未練だったのだろうね。そこで、紅に再び会い、理由を聞いた」

そう話しているロバートの体が突然、崩れ出した。

「おっと!やはり、君の血を受けていない体は脆いな」

ロバートは砂になっていく体を確認した後、俺に微笑んだ。

「少し待ってくれ」

すると、一瞬で崩れ落ちた砂が螺旋状に回転し、舞い上がると、そのまま一気にサーシャに向かって飛んでいった。

「!?」

すぐに、サーシャの体の中に吸収されると、彼女の左手の薬指に指輪ができた。

「モード・チェンジ!」

サーシャは迷うことなく、そう叫んだ。

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