天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「太陽の器」

ロバートはもう一度、その言葉を繰り返すと、開八神茉莉の体を凝視した。

「あと…計算外のことが一つ」

俺は先程の魔力を解放してから、ロバートに会い…話している間に感じた違和感を口にした。

「さっき…抗体というものを口にしましたが…もしかしたら」

「何だい?」

ロバートは考えるのを止め、意識を会話に向けた。

「もしかしたらなんですが…抗体ができているのかもしれません。感じるんですよ」

俺は胸を押さえた。

「何かを…」

そう何か…。

それが、何であるか…俺にはわからなかった。





その頃、俺の実家では、ある異変が起きていた。

しかし、その異変を俺は知ることはなかった。

遠くで感じていても…。

妹である綾子の死後…彼女の意思で、家族から俺と綾子の記憶は消えていた。

そして、子供がいなくなったはずの赤星家に、赤星麗菜という新たな子供ができた。

彼女の正体は、サーシャとフレアと同じ砂の世界から来た勇者である。

しかし、家族が増えた赤星家に、更なる異変が起きていた。

「只今」

学校から帰ってきた麗菜に、台所から母親が声をかけた。

「お帰り、麗菜。お兄ちゃんが帰ってきているわよ」

「お兄ちゃん?」

靴を揃えて脱ぎ、家に上がると、応接間に向かった麗菜は、そこで信じられない人物に会うことになる。

「お帰り…麗菜」

ソファに座り、寛いでいたのは…若い男の子だった。

そして、その男の子を…麗菜は知っていた。

「こうちゃん…」

絞り出すように、喉から出た名前。

「やっとお兄ちゃんが、一年ぶりに外国から帰ってきたのに…。ちゃんと挨拶しなさいよ」

固まった麗菜の後ろから、お茶をお盆にのせた母親が応接間に入ってきた。

「仕方がないよ。母さん。突然だったらからびっくりしたんだよ」

母親から、お茶を受け取って微笑んでいる少年は、赤星浩一…その人に見えた。


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