天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「!」

階段をかけ上がり、鉄のドアを開けると、そこに浩一がいた。

真上にある太陽を、肉眼で見つめながら。

眩しさに思わず目を瞑った麗菜の耳に、浩一の声が飛び込んで来た。

「君は何者だい?」

その質問に、麗菜ははっとした。

浩一は太陽から目を離さずに、

「赤星浩一の妹は、綾子という名前だったはず。それに、彼女は…この星の期待にそえずに、死んでしまったはずだ」

そう言った後、ゆっくりと目だけを麗菜に向けた。

「君は何者だ」

麗菜は、浩一の目力に怯みそうになった。後ろに下がりかけた足を止めると、浩一を睨んだ。

「あなたこそ何者よ!あなたは、こうちゃんじゃないわ」

「こうちゃん?」

麗菜の叫びに、浩一はにやりと笑った。

「そんな風に、赤星浩一を呼んだ女がいたな?」

そして、顎を引くと麗菜に目をやった。

赤く光る瞳を。

「ほぉ〜」

浩一は、感心した。

「成る程な。彼女の中に感じた大きな力の正体は、貴女でしたか…。テラよ」

「…」

浩一の前に、立っているのは麗菜ではなく、美奈子に変わっていた。

「あんた何者だ?」

美奈子は、鋭い眼光を浩一に向けた。

浩一が肩をすくめると、

「あなたと同じような存在ですよ」

瞳の色が元に戻った。

「あたしと同じような存在だと?」

美奈子の眼光は、さらに鋭くなる。

「と言っても、あなたがいなくなったから、生まれたんですけどね」

浩一は、にこっと美奈子に微笑んだ。

その屈託のない笑顔に、思わずたじろいだ美奈子。

その瞬間、美奈子の前まで浩一は移動した。

「うっ!」

美奈子は、後ろに下がった。

「テラよ」

浩一は、美奈子の瞳の中を覗き、

「あなたにテラという名前は、相応しくない。この世界を捨てた貴女には」

そこに映る自分を見つめた。

「別に、あたしは!」

美奈子は、浩一の瞳を睨み返した。

「テラなんて、名乗ったことはない!」
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