天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
美奈子の魔力が、浩一の瞳を射抜いた。

浩一は顎を上げ、身を反らした体勢になりながらも、にやりと笑った。

「了解しました」

ゆっくりと上半身を戻すと、浩一は美奈子を見つめ、

「もうあなたを…テラとは呼びません」

深々と頭を下げた。

その姿に、美奈子は不気味さを感じた。

「貴女が、この世界に害することがなければ…俺は何もしませんよ」

頭を上げた後、浩一は美奈子の横をすり抜けた。

「ま、待て!」

扉を潜り、階段を降りようとする浩一に、美奈子は慌てて振り返った。

「そうそう」

階段の途中で足を止めた浩一は、振り返ることなく、こう告げた。

「貴女ではなく、妹に伝えて下さい。しばらくは、兄妹の関係を続けるとね。でないとお互い…まずいでしょ?」

「く!」

美奈子は、下唇を噛み締めた。




「フッ」

階段を降りながら、浩一は口許を歪めた。

降りていく階段の先に、窓があり…太陽の照り返しで輝いていた。

「太陽は光。しかし、光の裏には闇がある」

浩一は階段から降りると、右に曲がり、教室を目指す。

「我は太陽。そして…」

浩一が歩く廊下の両端に、いつのまにか人間が並んで立っていた。

「人間は闇ではなく…まして、光でもない。ただのゴミ。いや、ゴミの方がましか。燃やせばいいのだからな」

浩一は廊下の途中で、足を止めた。

「この地球を汚す病原菌である人間を滅ぼす為に、我は生まれた」

浩一の瞳が、赤く輝いた。

「数が増えないように、戦闘好きな資質を与え、戦争をすることで、一定料以上増えれば減らすようにプログラムしても、自らの滅亡の危機に瀕すれば、大掛かりな戦争を止め、小競り合いばかり!本能が壊れたガラクタに、救いはない」

浩一はゆっくりと、歩き出した。

「この星を救う為には、人間を排除しなければならない」

そして、にやりと笑った。

「この赤星光一の手によって」

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