天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「何だ!あいつは!」

赤星光一の噂は瞬く間に、大月学園に広まった。

女子生徒は歓喜し、男子生徒は嫉妬する。

「赤星光一だと!?」

そんな中、俺だけは納得できなかった。1人、渡り廊下の手摺りにもたれ、グラウンドで活躍する光一を不満げに見ていた。

何故ならば、赤星浩一は俺だからだ。

しかし、モテモテの自分を見るのは微妙な感覚である。

学生時代、モテたことのない俺とそっくりな人間がいて、人気者である。

こんな幸せがほしかった。

なんて思っていると、サーシャが隣に来た。

「あの偽者をどうする?」

サーシャの言葉は嬉しいが…やはり微妙である。

「う〜ん」

悩んでいる俺を見て、サーシャはため息をついた。

「こうもあからさまな偽者がいたら、何かあると思うな。しかし…」

サーシャは、赤星光一を凝視し、

「あやつのレベルは、計り知れない。偽者というには、高過ぎる」

彼の全身から漂う魔力に、冷や汗を流した。

「そうですね」

俺は頷いた。

見た目は偽者だが…強さは本物だった。

「もし…やりあったら」

「ただではすまないな」

サーシャは、光一から視線を外すと、俺から離れた。

「うん?」

サーシャの動きに気付き、俺が隣を見ると、少し離れて麗菜が手摺の前に来た。

(ヤバい)

俺は慌てて、顔を逸らした。

麗菜は、グラウンドにいる光一の方を見つめていた。

「赤星さんのお兄さん。人気あるね!」

すると、麗菜の隣に和恵が来た。

「ええ…」

はぐらかすように言う麗菜を見ないように、ゆっくりと俺は手摺から離れた。




「…」

ずっと無言で、光一を見つめる麗菜の耳に、和恵のクスクス笑いが飛び込んできた。

「やっぱり気になる?お兄さんのこと」

「?」

麗菜が横に顔を向けると、目を輝かせている和恵がいた。

「べ、別に!」

麗菜は慌てて、否定した。

「ええ〜ほんとにい?」

じぃ〜と麗菜を見つめる目が近付いてくる。

「ううっ」

たじろぐ麗菜。
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