天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「ヘイ、ヘイ」

愛ホーンは邪魔くさそうに答えると、生徒達に襲いかかった。




「はははは!」

携帯片手に、大笑いする全身黒ずくめの男。

「我が名は、怪人縁切り!」

「キイイ!」

戦闘員達は襲った生徒達から、携帯を奪い、それを怪人縁切り屋に渡していた。

「たった一回のメールで、崩れる愛情や信頼〜!」

怪人縁切りは楽しそうに笑いながら、両手でメールを打ち、

「男と女。脆いものよのう!はははは」

天を仰いだ。




「乙女ブラック?蘭花か!」

半月ソルジャーの前に現れた乙女ブラックの姿を見て、身を乗り出した里奈の横に、元気になった夏希が駆け寄って来た。

「里奈!あたしにも行くわよ」

「どうしたの?あんた」

妙ににこにこして、嬉しそうな夏希に、里奈は首を傾げた。

「ち、ちょっとね」

はにかむ夏希の向こうでは、携帯を突き付けながら、恋人達の修羅場と化した廊下があったが…里奈の頭には、情報として飛び込んで来なかった。

男女のいざこざなど…里奈には、無縁の世界だからだ。

「お先に行くね!」

「え!」

夏希は、真意を悟られない為にか…廊下の窓から飛び降りた。

ちなみに、ここは三階である。

「装着!」

青い光が、夏希を包み…乙女ブルーへと変身させた。

着地と同時に、眼鏡を人差し指で上げると、

「うりゃあああ!」

叫びながら、半月ソルジャーの方に走って行った。

「大胆」

里奈は妙に、感心してしまった。




その頃、校門横に止まっていたリムジンの中で、眼鏡をかけた男がため息をついた。

「仕方があるまい。雑魚を片付けて来てくれ。お嬢様様が学園に入れない」

「かしこまりました」

男の言葉に、助手席にいた女が頷いた。

「ま、待て!俺は、お嬢様ではない!」

眼鏡の男と黒服の男に挟まれた形で、座っていた女子生徒が叫んだ。

「黙れ」

眼鏡の男は一喝し、

「中身が貴様であっても、この肉体は紛れもなく、お嬢様のお体。そうでなければ、やつらを誤魔化せない」

フロトガラスを見つめながら、虚空を睨んだ。

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