天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「まったく〜どうして、俺がこんなことを」

輝は、情報倶楽部の香坂真琴の命を受け、高坂真を調べる為に、情報倶楽部の部室に向かっていた。

ややこしいが、元々の古巣に戻ることになるだけで、ある意味解放だった。

しかし、どちらも報告義務があるから、邪魔くさかった。

「美人に命じられるのは、本望だけど…」

輝は、体育館裏に向かいながら、中央館一階から東館を結ぶ…渡り廊下の真ん中で足を止めた。

「うん?」

前から女子高生に囲まれて歩くという…輝が憧れるシチュエーションベストテンに入る羨ましい状況にいる男子生徒が、近付いて来たからだ。

変なジェラシーがわく前に、輝は男子生徒の顔を見て、眉を寄せた。

「あいつは?」

囲まれている男子生徒は、赤星光一であった。

輝は屈辱ではあるが、赤星達集団に道を開けた。

廊下の窓ガラスに背中を張り付けながらも、輝はじっと光一の横顔を通り過ぎるまで、見送った。

「そっくりじゃないか。異世界のそら似かな?」

窓ガラスから離れると、輝は光一の背中を見つめながら、首を傾げた。

その様子を、二本ある渡り廊下の奥側二階で見ていたサーシャは、光一が向かった方へ歩き出した。

「どう思う?あいつが、この世界を壊そうとしている黒幕だと思うか?」

サーシャの言葉に、ロバートは頭の中で答えた。

(それはないだろう。あの者が、赤星君を排除する為の抗体だとしたら、彼がこの世界に来てできたはず)

とまで言ってから、ロバートは悩み出した。

(そう言えば…赤星君は前に、この世界に戻ってきたことがあると言ってたな。その時にできた可能性もある)

「だけど!あの男が敵であることは、間違いないんだろ?」

サーシャは一目がないのを確認すると、渡り廊下の窓から一階に飛び降りた。

(待て!サーシャ!お前の力ではやつを倒せない!あの親衛隊長はどうした?)

「フレアなら、赤星君が来ないことに気付き、探しに行っている」

(健気だが…)

「心配するな!どうせ、あたし達は死んでいる!恐れることはないわ」
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