天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
サーシャは、廊下を風の如く走り抜けると、先回りをして、待ち伏せるつもりだった。

しかし、その時…先に光一を待っている者がいた。

「君は」

周りを囲む女子高生に、笑みを送りながら歩いていた光一は、突然足を止めた。

「生徒会長…」

光一の足が止まったことに気付いた女子高生の1人が、前を見て呟いた。

「そうか。君が噂の生徒会長殿か」

光一は、進路を塞ぐように前に立つ九鬼に微笑んだ。

「何か用ですか?」

真っ直ぐに自分を見つめる九鬼の目を、逆に光一は逸らさずに見つめた。

「あなたに話があります」

九鬼の言葉に、周りの女子高生がざわめく。

光一は口許を緩めると、

「みんな、すまないけども…ちょっと生徒会長と話があるんだ」

無理矢理、女子高生達から離れた。

「え〜え!」

一応、ブーイングが出たが、光一は気にすることはない。

「行きましょうか?生徒会長」

九鬼の前まで来ると、光一はウィンクした。

そんな光一の仕草に、九鬼は少しだけ目を見開いた後、顔を逸らし…背中を向けた。

「こちらで話しましょう」

そこまでの様子を、西館を越え、渡り廊下の先に到着していたサーシャは目にしていた。

慌てて身を隠すと、2人の後を追うことにした。




「ここでいいのかい?」

西館の屋上に来た九鬼と光一。

光一は両手を広げ、

「まさか、生徒会長様からお誘いを受けるとはね」

驚いた振りをした。

九鬼は、光一に背を向けたままで口を開いた。

「あなたは、赤星浩一でも…浩也でもないわ。だけど…」

ゆっくりと振り向くと、光一を見つめ、

「彼と同じように、強い力を感じる」

すぐに視線を下げた。

「それだったら、こちらも言いたいな」

光一は腕を下げると、

「君から凄い力を感じる。その力は、人間のものではない」

「!?」

九鬼は驚き、思わず顔を上げた。

光一は、そんな九鬼に微笑んだ。

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