天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
その笑みは、やはり…浩也に似ていた。

「あなたは…」

九鬼は話をそらさずに、本題を告げた。

「彼と同じ勇者であるならば、あたし達と戦ってほしい。敵は強大で、未だに全貌がわからない。だけど、あなたならば!」

九鬼は拳を握り締め、

「この世界を守れるかもしれない!」

光一の方に全身を向けた。

そんな九鬼を見て、光一はフッと笑い、少しだけ視線を外した。

「どうやら…君は…赤星浩一を知っているようだね」

「…」

「確かに、俺は…この世界を棄てた赤星浩一と違い…この世界を守りたい」

「だったら!」

光一の言葉に、九鬼の顔に笑顔が浮かんだ。

「しかし…」

光一はそこで、言葉を止めた。

「!?」

数秒の沈黙は、九鬼を戸惑わせた。

光一は笑みを封印すると、冷たい視線を九鬼に向けた。

「俺が守る世界に、人間はいらない!」

「!?」

突然、九鬼の視界から光一が消えたと思った時には、隣にいた。

そして、蹴りを喰らわすと、九鬼をふっ飛ばした。

一連の流れの速さに、九鬼は防御ができず、床を転がった。

「勘違いしないでおくれよ。これは、俺の考えではない!地球の考えだよ」

「何だと」

すぐに立ち上がった九鬼を見て、光一は驚いた後に、納得した。

「成る程、よけれないとわかると、自らとんだか」

「地球の意志だと!」

九鬼は構えようとしたが、脇腹が痛んだ。

「そうさ。今回、この世界で起こっていることは、地球も認めている。なぜならば、人間がいなくなれば、この世界は綺麗になれる」

「そ、そんな地球が…人間を…」

九鬼は最後まで、言葉を発することができなかった。

光一の膝が、九鬼の顎を突き上げたからだ。

「このスピードなら、反応できないだろ?」

弓なりの形で宙に舞い、落下した九鬼を見て、光一は微笑んだ。

「うぐぅ」

口の中が切れて、血が流れた。

「話し合いは、決裂だ。しかし、もう1つ案があるよ。君の為にね」

光一は、優しい笑顔をつくった。
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