天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
さらに、まだ完全に回復していない月の女神も、中島とともに学園を出ていた。

幸いではあったが…彼女達がいたところで、状況がよくなることはあり得なかった。



「ひぇ〜」

情報倶楽部の部室内で、パソコンを弄っていた舞は、悲鳴を上げた。

「最上級の神レベルが、5人も!?一瞬で、国がなくなっても、仕方がないかも」

「もしもし」

その言葉を、通信で聞いていた輝は冷や汗を流した。

「そんな相手だったら、僕はいらないんじゃないかな?」

本当は、何かあった時の為の奇襲要因としてに、光一がいた教室の隣で、机の下に潜んでいた輝は、まったく動けなくなっていた。

野生の勘が、輝の動きを止めていたのだ。

「状況が変わったのよ」

舞は、画面をモニターに切り替えた。

「とにかく、あんたは死なないようね」

「わかった」

通信を切ると、舞は学園中に仕掛けたカメラで戦いを映すと、ため息をついた。

「打つ手がないかも」





西館四階の廊下で、美奈子は後退しながら、銃を撃ち続けた。

しかし、アルテミアには通用しなかった。

「くそ!」

美奈子の脳裏に、嫌な記憶がよみがえる。

自らが死ぬ寸前のことを。

魔王ライに、まったく自分の力が通じなかったことを。

「こ、こいつらは!」

美奈子の苛立ちは、銃の精度を落としていた。

並んでいる教室の壁が、流れ弾で吹っ飛んだ瞬間、麗菜が叫んだ。

「あたしがやります!」

「何をしている!女神の力を持つあたしが、敵わないんだぞ!戦闘向きではないお前が!?」

「それでも!」

麗菜は叫んだ。

「モード・チェンジ!」

「やめろ!」

美奈子の制止をきかずに、麗菜に変わってしまった。

少し驚いたように見たアルテミアは、フッと笑うと、いきなり走り出した。

(やめろ!)

美奈子の声が、頭に響く。

しかし、麗菜の意識はもう…アルテミアにしか向いていない。

(勝負は一瞬!)

麗菜は、自らの鳩尾に手を当てた。
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