天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
アルテミアは美奈子の首根っこを掴むと、グラウンドまで引きずっていった。




「チッ!」

フラッシュモードとなったアルテミアと、西館裏で激突するサーシヤ。

スピードは圧倒的にアルテミアが上であるが、軌道を読んだサーシヤは何とかしのいでいた。

(やはり、人形だ。攻撃パターンが決まっている)

ロバートの分析力とサーシヤの身体能力により、防御だけはできていた。

「しかし、このままでは!」

反撃ができないならば、サーシヤに勝ち目はない。

(天空の女神相手で勝てる者は、いない!せめて、赤星君に魔力が使えれば)

ロバートは、悔しそうに言った。

「く!」

サーシヤは顔をしかめ、止まることのないアルテミアの攻撃を防いでいたが、じりじりと後退していた。

そして、いつのまにか…グラウンドまで来ていた。

「うん?」

サーシヤは横目で、グラウンドの中央を見た。

気を失っている美奈子を中心にして、乙女シルバーが構え、高坂が片膝をつけながらも、結局二人して捕まった緑とさやかを守っていた。

「高坂!あたしに、ケースを貸して!今のあなたじゃ…戦えない」

さやかの言葉に、高坂は頷いた。

「すまない」

乙女ダイヤモンドになっていた為に、四階からの落下に耐えることができたが…この後のアルテミアの猛攻により、高坂の体力は限界に来ていた。

「だが…勝てるかどうか」

高坂から乙女ケースを受け取ったが、さやかの手は震えていた。

そんな5人を囲むように立つ四人のアルテミア。


(どうやら、あそこに行かせたいらしいな)

ロバートの言葉に、サーシヤは唇を噛み締めた。

「そんな思い通りにさせない!」

サーシヤはドラゴンキラーの刀身で、アルテミアの蹴りを払うと、そのまま回転し、一歩前に踏み出すと切っ先を突きだした。

その動きに、アルテミアは後方に下がった。

「いくぞ」

さらに前に出ようとしたサーシヤは、足を止めた。

「な」

絶句するサーシヤの目に、アルテミアの姿が映る。

白い翼を広げ、純白のドレスを身に纏った姿は…。
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