天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「部長!しっかりして下さい」

高坂の変身が解け、その手から乙女ケースがこぼれ落ちた。

「部長!」

気を失っている高坂を抱き止め、呼び掛ける緑に向かって、アルテミアは指先を向けた。

「まったく」

さやかは頭をかくと、アルテミアの指先の軌道上に立った。

「あたしももがいてみるか!」

足下に落ちている乙女ケースを拾うと、叫んだ。

「装着!」




「くそ!」

戦いは熾烈を極めているように見えたが…違っていた。

5人のアルテミアは、本気を出していなかったのだ。


「フフフ…」

西館四階から、戦うの模様を観察していた光一は、楽しそうに笑った。

「アダムが加勢したところで、戦況は変わらない」

光一は天井を見上げ、

「お遊びは、終わりだ。とどめを刺せ!アダム以外は、塵と化しても構わない!」

グラウンドにいるアルテミア達に命じた。


「な!」
「チッ!」
「くそ!」

突然、攻撃を止めたアルテミア達は、後方にジャンプすると、槍をつくり構えた。

「女神の一撃か!」

先程と違い、地上に足をつけての攻撃体勢である。

俺は再び羽を出し、火の玉を放とうと思ったが、途中で断念した。

(先程は、奇襲だった。もう通じない)

俺はライトニングソードを握り直すと、真後ろの九鬼達を見た。

(ティアナさんのように、攻撃を斬り裂いて、懐に飛び込むことはできる!しかし!)

自分の進路はできるが、後ろの九鬼達を守ることはできなかった。

(どうする?)

悩んでいる暇は、なかった。

アルテミア達の槍が輝き、風が集まって来ていた。

(南無三!)

俺はフラッシュモードで、5人を一瞬で斬り裂くことに決めた。

「モード・チェ」

とまで言った瞬間、空から落ちて来た五つの雷が、アルテミア達を直撃した。

「このような所業!我が王を愚弄するとはな!許さん!」

「!?」

一瞬のことで、俺も何が起こったが、わからなかった。

振り返った俺の顔に、影が落ちた。
< 221 / 295 >

この作品をシェア

pagetop