天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「この世界は、砂のように脆い。あなた程の魔力を何度も使えば…崩壊する可能性があるわ。今さっきのでも、この世界は震えていたわ」

「!」

俺は、周囲を見回した。

確かに砂の量が、減っていた。

「この世界は、仮初めの世界。いつなくなっても、おかしくない」

「そ、そんな〜」

肩を落とす俺に、和美は駄目だしをした。

「それに、そのカードが使えるポイントは、ブルーワールドの人々が必死になって集めたもの。ここまで、来るのにどれ程のポイントを使いましたか」

「う」

俺は焦った。

まさか…全ポイントとは言えなかった。

(やはり…使用するポイントは、最小限にしなければ)

俺は肩を落とし、ため息をついた。

そんな俺を見て、和美は話題を変えた。

「あなたは、特別な存在。力があるというだけではなく…何を為そうと、いつも頑張っている」

和美は空を見上げ、

「神とも呼べる存在になりながらも…あたなは、もがき…成長している」

「え?」

「成長する神は、珍しいわ」

和美は優しく、微笑んだ。

「だから…大丈夫よ。例え…魔力が使えなくても」

「和美さん」

俺は思わず、和美の方に一歩、足を出した。

「あなたの勇気と優しさが必ず…あの世界を救う。あたしが生まれた世界を」

その言葉が、俺の耳に飛び込んできた時には…俺は、西館の屋上にいた。

「な!」

俺は慌てて、ブラックカードを見た。帰りの魔法は使っていない。

生きた人間が、砂の世界に行くには、本来は…宇宙空間から、太陽と地球の間にできる影から入らなければならない。

そんな正当な方法を使っていない。

「和美さんが、帰してくれたのかな?」

俺は無理矢理納得すると、屋上から九鬼達を見下ろした。

「とにかく、守らなければならない」

視線を自らの手に向けると、

「この体!この力で!」

拳を握り締め、改めて誓った。
< 226 / 295 >

この作品をシェア

pagetop