天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「別におかしくはないわ」

リンネはじっと見つめながら、腕を組んだ。

「ただ…姿形を似せても、あなたと彼は違うと思ったの?」

「彼?」

リンネの言葉に、光一は眉を寄せた後に、せせら笑った。

「ああ!あいつのことか!この世界の神になれるはずが、たった1人の女に騙されて、すべてを失ったあいつか!」

「…」

リンネは、光一を見つめたまま、何も言わない。

「女など!腐るほどいる!どんなに美しい女も、すぐに飽きる。それに、美しい女もまた、腐るほどいる!そして、簡単に手に入る!」

光一は手のひらを、リンネに向け、

「しかし、神は1人だけだ」

拳を握り締めた。

「そうね」

リンネは素っ気なく、こたえた。いつのまにか、顔から笑みが消えていた。

光一は自分の言葉に酔っているからか…リンネの変化に気付かない。

「客人よ。あなたには、期待している。あなたの力で、この世界を焼き尽くすことをな!ハハハハ!」

拳を下げると、光一は体の向きを戻し、廊下を歩き出した。

光一が見えなくなると、リンネのそばで、刈谷が跪いた。

「あの無礼な男…。ご命令とあらば」

「よい」

リンネはそう言うと、逆方向に歩き出した。

「リンネ様?」

「つまらない男。たった1人なのは、神だけではないわ」

リンネは、前方を睨んだ。

「それなのに…」

そこまで言ってから、リンネは苦笑した。

不機嫌になっている自分に対してである。

「まあ〜いいわ」

リンネは再び微笑みと、ゆっくりと廊下を歩きながら、空間に染み込むように姿を消した。

刈谷も跪きながら、頭を下げると…同じく姿を消した。

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