天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
そして、辺り構わず発砲した。

草むらや茂みに隠れている動物を狙ったのだ。

「こ、こんなところで!」

だけど、大型動物はいなく、鳥くらいにしか当たらなかった。

「少ない!」

藤崎は後退りながら、動物を探した。

彼の考えは、こうだ。

動物の血を流させることで、茉莉の体の気をそらそうとしたのだ。

「食うのはいいけど!食われるのは御免だ」

茉莉を見ないようにして、移動していたが…視界の端に、赤い瞳が映った。

次の瞬間、藤崎は躊躇うことなく、指で左目を抉った。

そして、その目玉を茉莉の後ろの方に投げた。

飛んでいく目玉に、気を取られている間に、藤崎は全力で逃げた。

「冗談ではない!は、話が違う!」



飛んでいく目玉を目で追う動きを、俺は茉莉の中で、まるで映画を見ているように見ていた。

(体がいうことをきかない!)

意識と肉体が切り離されているかのように、暴走し始めた茉莉の体は、藤崎の目玉を口に含んだまま…咆哮した。

その叫びは、山々にこだました。




「暴走したか」

「はい」

真田の言葉に、筧剣重郎と上月佐助、猫沢巫女が頷いた。

「久々の血の洗礼だ。暴走するのも当然」

真田は、眼鏡を人差し指で押し上げた。

山一つ隔てた螺旋状の国道の下、斜面に生えた木々の上に、4人はいた。

「神故の業。それを知らなければならない」

真田は眼鏡の奥で、目を細めた。

「それにしても…よろしいのですか?」

猫沢は、真田の方に顔を向けた。

「フッ」

真田は口元を緩めると、魔力が立ち上る山の向こうから目を離さずに、言葉を続けた。

「我々に選択権はない。もし…あるとすれば、あいつだけだ」

そう言った後、真田は3人に命じた。

「いつもの如く…扉を開けろ」

「御意」

3人は頷くと、四方に消えた。

「…いくか」

3人が消えると、真田もまた、前方に向けてジャンプした。
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