天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
(あり得ない!)

魂と肉体のシンクロ率が下がり、俺はただ暴走する茉莉の体を第三者的立場から、見守ることしかできなかった。

茉莉から離れ、魔力だけで仮初めの肉体を作ることもできるが…その瞬間、世界が崩壊する。

残された方法は、何とかシンクロ率を戻すしかなかった。

(やれるか!)

四苦八苦していると突然、茉莉の周りの空気が変わった。

(結界!?)

茉莉を中心として、幅一キロ程の正方形をした見えない壁が張られていた。



「は!」
「は!」
「は!」
「フン!」

四方に散らばった真田達4人の手を角にしてできた結界は、気合いを入れると、手から離れ、狭まっていく。

そして、茉莉の体を囲む結界が、2メートル程の大きさになった時、中の景色が変わった。

次の瞬間、正方形の結界は砕け散った。

(ここは!?)

一瞬にして、日本から見知らぬ土地にテレポートさせられていた。

(難民キャンプ)

砂漠地帯に広がる粗悪なテントの数々…。

そして、ボランティアの車。

「×××――!」

声にならない奇声を上げると、茉莉の体はテントに襲いかかった。




「神の行いは、天災に近い。気の毒だが…仕方があるまい」

真田達は、先程まで茉莉の体がいたところまで、来ていた。

「多少の犠牲はつきものだ。それに、この世界の人間を食わすだけの食料がないのだ。ならば、貢ぎものになって貰う他あるまいて」

「ふざけるな!」

真田が、スーツの内ポケットから煙草を取りだそうとした瞬間、目の前に俺がテレポートしてきた。

真っ赤になった口元を拭いながら、戻ってきた俺を見て、真田は煙草から手を離すと、フッと笑った。

「暴走は落ち着いたか…」

真田は、激しく肩で息をしている俺に目を細め、

「それに…お嬢様の力を制御できるようになったのか。貴様…何者だ?」

じっと俺を見つめた。

< 249 / 295 >

この作品をシェア

pagetop