天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「レダ…」

それは待ちわびた名前であったが、俺にとってはアートウッドの方が衝撃だった。

(アートウッド)

それだけで、謎が解けた気がした。

じっと見つめ返す俺に、ジュリアは座ることをすすめた。

「あなたのことが、気になって調べたわ。そしたら、あたしに会いたいと」

「はい」

2人は、対面する位置でソファーに座った。

「あなたは!」

俺はすぐに、話し出した。

「歌の中に、この世界の崩壊を暗示するメッセージを込めた。そんなことを何故?何故!分かりにくいことを!直接、言葉にすれば…」

「直接の方が、伝わりにくいことがあるわ。より深くあたしの歌が、響いた人は、そこに疑問を持つ。その隠されたメッセージの意味を知ろうとする」

ジュリアは真っ直ぐ、俺の目を見つめ続ける。

「しかし、それじゃ…多くの人に伝わらない」

「それに…あたしは、真実を歌える立場にいなかった」

「!?」

ジュリアはここで、視線を2人の間にあるガラスのテーブルに落とした。

「もし…思い通りに歌えたとしても、誰が信じるかしら?世界が崩壊するなんて」

「そ、それは」

俺は、口ごもってしまった。

「ずるいようだけど…あたしの歌は、この世界の人々には、レクイエム。だけど…」

ジュリアは、ここで言葉を切り、

「世界を救う力を持つ人には、救いを求めていたの」

ゆっくりと顔を上げた。

その瞳には、涙が溢れていた。

「歌手は、無力。何もできない。もうすぐ、計画が始まるのに…何もできない」

「待って下さい!」

俺は、一方的に話し出したジュリアを止め、

「計画とは、この世界の人間をブルーワールドに落とすことですよね。それをなぜ、あなたが知り…始まることもわかっているんですか!」

思わず声を荒げた。

「異世界への扉を開くには、生け贄が必要よ。その生け贄の魂の数が、もうすぐそろうわ」

ジュリアは、知っている理由を敢えて言わなかった。ただ、涙を拭った。

「や、やつらは!魂を集めているのですか?人間を殺して!くそ!」


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