天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
テーブルを叩いた俺を見て、ジュリアの表情が厳しくなった。

「一体…どうやって」

考え込む俺に、ジュリアは言った。

「あなたは、知っているはずです」

「!」

ジュリアの言葉に、俺は思わず彼女の顔を見た。

「あなたは先日…いや、あなたではないかもしれませんが…多くの人を殺したはずです」

「!!」

俺は思わず、立ち上がった。

ジュリアは、俺を見上げ、

「あなたは、真実を見極めるべきです」

数秒見つめた後、ゆっくりと立ち上がった。

「あなたなら…できるはずです」

そして、ジュリアは俺に頭を下げると、ソファーから離れた。

「ま、待って!」

呼び止めたが、ジュリアは止まらなかった。

「ごめんなさい。これ以上は、話すことはないの。もうあたしには、時間がないし」

「ジュリアさん」

俺の叫びに、扉を開けようとしたジュリアの手が止まった。

「…ジュリア。そう呼んでくれた人は…御姉様と家族以外いないわ。ありがとう」

ジュリアは振り返り、頭を下げると、最後のヒントを口にした。

「あなたの敵は、近くにいます。カーテンを開ければすぐに」

「!?」

俺の頭に、闇に浮かぶ屋敷が浮かぶ。

「さよなら…」

「ジュリアさん!」

俺は、訊くのをやめた。

なぜならば…ジュリアが座ってたソファーの上に、砂がこぼれていたからだ。

「あなたの歌。最高でした。ジュリア・アートウッドは、最高の歌手です」

「ありがとう」

ジュリアはもう一度、頭を下げると、

「本当は、ジュリア・アートウッドの歌を聴かせたかったわ。あたしが、歌ったのはレダのカバーだから」

「レダのカバー?」

驚く俺に、ジュリアは頷いた。

「本物のレダは、ブルーワールドにいる。2つの世界を憂いながら」

「レダがもう1人いる?」

眉を寄せる俺に、ジュリアは微笑むと、応接室から出た。

これが、俺とジュリアの最後の出会いとなった。

ほとんど初対面の俺に、この世界を託して、彼女は去っていった。
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