天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「そして、それが最終目的でもあります」

ヤーンはおもむろに、目を伏せた。

「!」

その目の動きに、ティアは嫌なものを感じた。

「…」

ジャクは、煙草を吸いながら、黙っていた。

「…わかったわ」

敢えてきくことをせずに、ティアはその場から消えた。

「従順な女は、好きですよ」

ヤーンもその場から、消えた。

「ケッ」

2人がいなくなった後、ジャクは煙草を砂の上に捨てると、足で踏みつけた。






「…」

理事長室を出て、階段を上り、西館から外に出た俺は、校門に向けて歩き出す。

その様子を、横目で確認する九鬼。

「!?」

九鬼の隣に立つ姫百合は、威風堂々と歩く俺に、息を飲んだ。

ちらっとだけ2人を見て、俺は心の中で少しだけ驚いた。

(彼女達は、普通の人間ではない)

それがわかったところで、今は構っている暇がない。

俺が通り過ぎてから、少し間を開けて、九鬼も歩き出した。

別に気にすることなく、歩き続ける俺の先に、真田が立っていた。

校門の向こうに、リムジンが見えた。

「いくのか」

真田の問いに、俺はああと答えた。

「フン」

真田は鼻を鳴らした後、眼鏡を人差し指で上げた。

俺は、そんな真田の横を通り過ぎた。

勿論、リムジンに乗るつもりもない。

校門を潜った俺に、真田は振り返ることなく言った。

「今のお前の体は、お嬢様そのもの!だから、止めることはしない。しかしな!」

真田は、歩いてくる九鬼を見つめ、

「その肉体から、離れた時…俺は、お前を殺す。この前言った…忠告を無視するならな」

言葉に殺気を込めた。

「了解」

俺は、それだけ言うと、その場でテレポートした。

消えた俺を見て、慌てて駆け出した九鬼に、真田は告げた。

「菱山財団の屋敷だ」

「!!」

九鬼は思わず、足を止めた。

数秒後、頭を下げると、校門を潜ってからダッシュし出した。


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