天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「うわああっ!」

俺と光一のぶつかり合いで、弾けた魔力は、球場程の部屋でも抑え切れずに、爆発した。

部屋を包むようにあった結界に、穴があき、俺は壁を突き破って、廊下に転がった。

「痛ててて」

俺は、何とか離さなかったシャイニングソードを杖代わりに使うと立ち上がり、廊下を歩き出した。

「どこにある!人々の魂は」

最初から、光一に構っている暇はなかったのだ。

俺は魔力を抑えると、魂を探ることにした。

「あっちか」

ブラックカードを取り出すと、体力だけを回復させた。

(ありがとう。アルテミア)

俺は、このカードを送ってきてくれたアルテミアに感謝した。




「何だ?」

今の爆発音は、屋敷内にある客室で寛いでいたジャックは、廊下に出た。

「何事だ?」

ジャックは、隣の部屋にいるティアの扉を叩いた。

鍵が開いていた為、中を覗いたが、いなかった。

「魔力を感じる」

手が足よりも長い男が、ジャックの前の部屋から出てきた。

それだけではない。

すべての部屋から、人が出てきた。


「退いて下さい!」

シャイニングソードを握り締めながら、俺は廊下を走っていた。

「な、何だ?」

ボロボロの学生服の女が、剣を持って走ってくるというシチュエーションに、ジャックは思わず首を傾げた。

「ヒイヒイ」

手長男だけは、シャイニングソードの輝きを見て、悲鳴を上げると、部屋の中に戻った。

「な、何だ?」

剣を持っていることを頭が理解すると、ジャック達は壁際に、背中をつけた。

「すいません」

俺は、廊下の真ん中を駆け抜けた。シャイニングソードを輝かせながら…。


「な、何だ?今のは」

思わず道を開けてしまった自分に驚きながら、ジャックは煙草を取りだそうとした。

しかし…。

「え」

ジャックは、手がなくなっていることに気付いた。

「な、何だ」

なくなっているのではない。

砂に戻っていっているのだ。

「馬鹿な!」

ジャックは気付いた。

自分以外の廊下に出てきた人間達も、砂に戻っていくのを。
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