天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
菱山の悲痛な叫びに、俺は心の中で、首を捻っていた。

(何の話だ?)

ブルーワールドにいる時も、神レベルとかいう時もあった。

しかし、それは…圧倒的な強さを意味していた。

真田や菱山が言う神は、違った。

「確かに…神にお金は、関係ない」

真田は頷くと、頭を下げ、菱山の前から移動した。

「伯父様」

菱山の目の前に、茉莉がいた。にこっと笑いかける無垢な笑顔を、見た瞬間、菱山の体は固まった。

いや、実際は目玉がない菱山に見えるはずがない。

「チッ!」

舌打ちすると、俺は2人に近づこうとした。

すると、猫沢と上月が道を塞いだ。

「神とは…」

真田は、頭を下げ続けた。

「人間の常識をこえた存在。故に…無垢」


「き、貴様ら!」

菱山の体が、変幻した。

蜘蛛をイメージするその姿は、全長5メートルをこえた。

「私が、小娘に!」

椅子を踏みつぶすと、口から糸を吐き、少年の自由を奪うと、巨大な口を開いた。

「お前を食らい、神の力を手にいれてやる」

そのまま、頭から食らおうと、菱山が動いた次の瞬間、彼の体は小間切れになった。

「やっぱりね」

少年は、微笑んだ。

小間切れになった菱山の体から、白い光を放つ球体が姿を見せた。

「魂の塊。あんたごときが、その身に宿したとしても、扱える訳がないの」

少年が球体に手を伸ばすと、吸い寄せられるように、自ら飛んでいった。

「!」

その動きを確認すると、猫沢と上月は、俺の前から離れ、少年の前に移動した。

「時は、満ちました。後は、あなた様の思うがままに…」

真田はちらっと俺の方を見た後、少年の方に移動し、跪いた。

「大義であった」

少年は微笑むと、まずは上月の方に近付き、首筋に噛みついた。

「有り難き幸せ」

一瞬で、ミイラのようになった上月を見て、俺は少年の方に走った。
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