天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
遠ざかっていく乙女ブルーの背中を見つめながら

「しゃ〜ないか」

里奈は頭をかくと、窓に背を向けて、まだ戦闘員達でごった返している廊下を歩きだそうとした。

「うん?」

すぐに、違和感に気付いた。

「誰もいない」

逃げ惑う生徒と戦闘員のいざこざで、騒がしいはずの廊下に人がいないのだ。

ここしばらくの戦いの日々が、無意識に里奈の手に乙女ケースを握らせていた。

「だ、誰?」

誰もいない廊下に、誰かがいた。

最初は陽炎のように、揺らめきながら…すぐに姿を表した。

「お、乙女…レッド!?」

目の前に立つのは、紛れもなく…乙女レッドであった。

乙女レッドは、にやりと笑った。

「あ、あたし…じゃない!」

里奈は、乙女ケースを突きだした。

「装着!」

赤い光が、里奈を包む。

「…×××××」

その姿を見て、目の前に立つ乙女レッドの唇が震え、何かを口にしたが…里奈には聞こえなかった。

「兵装!」

乙女ケースの形が、剣に変わった。

「うりゃああ!」

乙女レッドに向かってジャンプすると、一気に剣を振り下ろした。

次の瞬間、

「うぎぃ!」

奇声を発して倒れたのは、戦闘員の1人だった。

「え?」

驚く里奈は、剣を振り下ろした体勢で固まってしまう。

「乙女レッドだ!」

周りの生徒達の声で、我に返ったが…まだ、頭の整理がつかない。

「キイイ!」

仲間を倒された戦闘員達が、里奈を囲んだ。

「え?え?え?え〜っ!?」

混乱しながら、戦いは始まった。




「あくまでも、中立でお願いします」

男の言葉に、何も言えなくなった理香子。

男は頭を下げ、口元に笑みを浮かべた。

「よしなに…」

「騙されるな!月の女神よ」

「!?」

突然、頭上から声がした為に、理香子は上を見た。

「チッ!」

男は舌打ちすると、後方にジャンプした。

男がいた場所に突き刺さるドラゴンキラー。

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