天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
すると、俺がいた場所に、弾が着弾した。

部屋の隅から、ライフルを構えた剣じいが出てきた。

剣じいは、俺の動きを止めようと、再び銃口を向けた。

しかし、その瞬間、剣じいの首が飛んだ。

「太陽様に、何をしている」

一瞬で剣じいの後ろに移動した少年が、手刀で切り裂いたのだ。

「う!」

俺は、少年から漂う魔力に息を飲んだ。

その体は、俺が作ったものであるが…完璧に支配されていた。

中に入っている茉莉の魔力が、血管のように、全身に走っていた。

「太陽様」

満面の笑みを浮かべる少年に、俺は足を止めた。

「邪魔をするな」

跪いている真田が、俺に向かって言った。

「我々は、茉莉様の力となるのだ。これは、決まっていたことであり!名誉なことだ。魂を抜かれ、道具にされる者達よりもな」

「チッ!」

真田の言葉を聞いた瞬間、俺は移動し、真田の首根っこを掴むと、無理矢理立たせ、鳩尾に拳を叩き込んだ。

「う!」

一瞬で、気を失う真田。

「!」

驚いた猫沢が、立ち上がったが、俺の動きに何もできずに、一撃で気を失った。

「何をなさっているのですか?」

気を失った2人を床に寝かせる俺を見て、少年は首を捻った。

「彼らが、望んだことをしてあげるだけなのに」

「人の血を吸い、殺すことが彼らの願いだというのか?」

俺は立ち上がると、少年を睨んだ。

「やっぱり…」

そんな俺を見て、少年は顎に人差し指を当てると、少し考え込んだ。

――と、俺には見えた。

「太陽様は…自分が、何者なのか!わかってらっしゃらないのね」

「!」

俺の思考よりも、速く移動した少年は、後ろから俺の耳元に囁いた。

「太陽様も…神なの。だ・か・ら」

少年は、俺の耳に息を吹きかけながら告げた。

「人間のような考えは、捨てて下さいませ」



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