天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「なに!」

俺は、絶句した。

少年の速さだけではない。

いつのまにか、場所が移動していたからだ。

「ここは?」

俺は、周りを見回した。

校舎の位置。

見慣れた風景が、俺にここがどこか、教えてくれた。

「大月学園!?」

しかし、人の気配がない。

学園の周りにもだ。

周りを見回す俺を見て、少年はクスクスと笑った。

「誰もいないだと!?」

俺は、後ろに立つ少年に向かって、振り返った。

「そうですの」

少年は、手に持っていた魂の塊を上に投げた。

すると、遥か上空で太陽のように輝き出した。

「この世界は、あたしが創った世界です。人がいない…素敵な世界!」

少年はそう言うと、手を組み、嬉しそうに踊り始めた。

「世界をつくっただと!」

「そうです」

少年がパチンと指を弾くと、今度は一面がジャングルと化した。

それから、次々と変わっていく。

氷だけの世界。サバンナ…エベレストの山頂。

「クッ!」

俺は唇を噛み締めると、自分の魔力を発動させた。

「駄目ですわ」

突然、周囲の風景が混ざり、黒一色になった。

「まだ安定していませんのに」

少年の言葉に、俺は目を見開いた。

「ここは、まだ向こうの世界とくっ付いています。だから、あまりお使いにならない方がいいですよ。あたしは、別に〜向こうの世界が壊れてもいいですけど!」

少年は、愕然としている俺に微笑みかけた。

「どういうことだ!」

俺は、少年の体を見て叫んだ。

「だったら、この体の魔力も!使えば、破滅するのでは」

「あまり、使ってませんわ。だけど〜やっぱり、力を使うと、空間が壊れるみたいですわ」

少年は踊りをやめ、

「前に、太陽様と同じ会場にいた時も、穴が空きましたし」

また顎に人差し指を当てた。

「な!」

俺の脳裏に、オウパーツをつけたレダの偽者の姿がよみがえる。

少年は無邪気に、話を続けた。

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