天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「あなたのような存在を認めない!」

茉莉の叫びに、アルテミアは鼻を鳴らすと、気弾を片手で止めた。

それから、指を曲げると、気弾を少し圧縮し、くす玉くらいの大きさにすると、それを俺に向かって投げた。

「浮気をした罰だ」

「え!」

体の自由が戻ったとはいえ、魔力の使えない俺は、高速で近付く気弾を避けることもできなかった。

この世界が、向こうと裏表になっている限り、破壊させる訳にもいかなかった。

仕方なく…俺は、気弾の直撃を受け入れた。

「太陽様!」

茉莉は絶叫した。

「フン」

アルテミアは、そっぽを向いた。

気弾の直撃により、俺の体は一瞬で消滅した。

「太陽様あああ!」

絶叫する茉莉は手を伸ばしたが、気弾の炸裂によって発生した目映い光は、すぐに終息した。

再び何もない暗闇に、戻る。

「太陽…様…」

その場で崩れ落ちる茉莉。

その様子を無言で見つめるアルテミア。

「よ、よくも!太陽様を!」

すぐに立ち上がった茉莉は、アルテミアを睨み付けた。

アルテミアは息を吐くと、肩をすくめて見せた。

「太陽様は、わたくしが初めて好きになったお方!その方とならば、わたくしのつくる新しい世界に、人間をつくることも許したのに!」

茉莉の姿が、変わる。

「2人で、肉体を入れかえ!互いの体を確かめ合った仲なのに!」

蝙蝠の羽に、牙を生やした姿は…神ではなく、悪魔であった。

「肉体を入れかえねぇ〜」

アルテミアは腕を組み直し、

「あたしは、嫌だね」

茉莉を見た。

「何!」

茉莉は、アルテミアの様子に眉を寄せた。

「だって、そうだろ?互いの体を入れかえてどうする?」

アルテミアも眉を寄せ、

「知りたいのは、相手の体か?心だろ」

右手の親指で、自分を指差した。

「肉体なんて、いつでも知れる。大切なのは、中身。てめえのやり方だと、一生相手の気持ちは、わからないぜ」

「な」

絶句する茉莉に、アルテミアは強烈な言葉を放った。

「お前…恋なんてしていないだろ?」
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