天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「砂の使者か!」

男は、理香子の前に着地した女を睨んだ。

腰まであるエメラルドグリーンの髪を靡かせて、女は男に襲いかかる。

「くそ!」

ドラゴンキラーの突きが届く前に、男の体は闇に包まれて消えた。

「チッ!」

虚しく空を斬るドラゴンキラー。

「あなたは?」

「…」

無言で振り返った女の向こうで繰り広げられている戦いを、理香子の目がとらえた。

「!?」

ドラゴンキラーをつけた女よりも、理香子の意識はグラウンドにいる者に絶句した。

「あたしの…知らない乙女ソルジャー」

半月ソルジャーの前にいるのは、乙女レインボーであった。

「月の女神よ」

目を見張っている理香子に、女は話しかけてきた。

「この世界が崩壊しだしている。我々は、この世界を救いに来た」

「え?」

理香子の視線上に、体を移動させた女は、まっすぐに目を見据えた。

理香子の意識が、乙女レインボーから女に戻った。

「世界が崩壊する?」

「はい」

女は頷き、

「あたしの名は、サーシャ・ハイツ。砂の世界から、この世界を守る為に来ました」

ゆっくりと歩き出した。

「赤星浩一が我々の世界を守ってくれたように…あたしは、彼の生まれた世界を守ってあげたい」

「あなたは…」

理香子は、サーシャが歩く度に足下に砂が落ちていることに気付いた。

「あたしの故郷は、ブルーワールド」

サーシャは、理香子の前に跪いた。

「この世界の崩壊を救う為に、力を貸して頂きたい」

真摯なサーシャの言葉に、理香子は膝を落とすと、

「誰が、この世界を崩壊させようとしている?」

サーシャに訊いた。

「それは…わかりません。しかし、この世界をつくったあなたならば…」

「今のあたしに、世界をつくる力はないわ」

理香子は、首を横に振った。

「だが、この世界は成立している。あなた自身にはなくても、あなたに関係した何かが…この世界を安定させているはずです」

「それは…」

理香子は考えだしたが、思い浮かばなかった。

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