天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「え!」

俺は、アルテミアの話には驚いてしまったが…そう考えると、自分自身の行動の意味が理解できた。

「あいつが、分身であるお前と融合せずに、逃がした意味はただ一つだ!」

アルテミアは、海面から飛び出すと、翼を広げた。

「自分を殺しても、お前が残る!そう考えたんだろうがな!そんな勝手をさせるか!」

アルテミアは、一気に地中海から、アフリカ大陸の地平線に沿いながら、低空で飛んだ。

「勝手は許さん!自分勝手は、あたしだけの専売特許だ!」

アルテミアは、前方を睨んだ。





「フッ」

防衛軍本部内で、1人チェスをしていた白髪の男は、笑っていた。

いろんな形をした駒達。

それを指で、掴みながら、男は口を開いた。

「すぐに、本部を移そう。こんな猿臭い島にあるなど、虫酸が走る」

次々に駒を動かし、

「魔物と違い…人間は、一種類しかいない」

ふと手を止めた。

そして、前を向くと、磨き上げられた扉の表面に、己の顔を映った。

「我々…ブルーアイズこそが、唯一の人間。あとの瞳の色は…猿と同じ!」

男は再び、駒に目をやった。

「猿は、我々の糧になれ!そうでなければ…生まれた意味がない」






「帰ったか」

カードの魔法を使い、旧防衛軍本部内に入ったヤーンを、2人の男が出迎えた。

一際綺麗なブロンドの髪と青い瞳を持つ…兄と弟。

しかし、ヤーン自身は…黒い髪に、漆黒の瞳だった。

「少し計画が変わったが…問題はない」

3人の中で一番背が高い、兄のディーンが笑いかけた。

「兄さんは、何年も向こうの世界にいたんですから」

短髪の少し癖毛は、弟のレーンであった。

金色の剣聖と呼ばれる程の戦士であった。

「少し疲れた故に…失礼します」

2人の間を通り抜け、ヤーンは廊下を歩き出した。

「エリートか」

ヤーンは呟くように、それだけを口にした。

2人の方を振り返りことは、まったくしなかった。

「しかしな。フフフ…」

ヤーンは含み笑いをしながら、自らの腹の辺りをさすった。

すると、服の下が少し光った。





天空のレクイエム。

完。
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